⬜Ψ⬜
2025/08/13
2025/08/11
Zoneの「良くある」怖い話
[PDA音声録音開始]
昨夜、奇妙なことが起きた。
ストライダーが外出している間、一人で作業室に居て、ハーブの調合をしていると、玄関のドアがゆっくりと開く音が聞こえた。
足音は聞こえない。風か、と思ったが空気の流れは感じられない。
「ストライダー?」
呼びかけても返事はなし。
コントローラー能力で周囲の生命反応をスキャンしたが、私以外に何も検出されない。それなのに、確実に「誰か」がそこにいる気配がする。「何か」ではなかった
台所へ向かう足音が響く。まるで素足で歩いているような、ぺたり、ぺたりという音。
しかし床に触れても、足跡の温度も湿り気も残っていない。
冷蔵庫が開く音。
中身を物色するような音。だが何も取られていない様子だった。
その「何か」は私の前を通り過ぎて、奥の部屋へ向かった。サイフィールドに薄っすらと人型の影のようなものが映る。
しかし、それは記憶の残像のように曖昧で、気を抜くと消えてしまう。
30分ほどして、ストライダーが帰宅した。質量のある気配だ。
「おかえり」と作業室から声をかけると、彼は困惑して大きな声で答えた。
「え?俺はまだ玄関にいるよ。今入ったところだ。...今、出迎えてくれたのは誰だ?」
Zoneには、生きているとも死んでいるとも言えない「何か」が存在する。それは本来なら見えてはいけない。
それは時として、愛する人の姿を借りて現れるのかもしれない。今日にも、君の側で、それは君を「見て」いる……
[録音終了]
2025/08/10
ある日の出来事
焼かないフルーツタルト、ノーベイクタルトを作って、スペードと呼ばれるヌーンタイダーに録画等を任せてみた。
意外にも、私は独り言が出ないらしい。いや、自覚していたら“独り言”にならないのか。
後々レシピも添える等して、覚書にしよう。
2025/07/04
Ψ 1
湿った草を踏みしめるたび、大地がかすかにため息をついていた。
その音は、低く小さなつぶやきのようで、私の歩みを静かに見送っていた。
水を含んだ小径は私の足音を吸い込み、やがてあたりは沈黙に包まれる。
音のない世界。
けれど、そこで植物たちは確かに生きていた。言葉ではない何かで息づき、私の肌に囁きのように降り積もっていく。
それは声なき命の存在感──耳ではなく、感覚で聞くものだった。
家にたどり着き、木の扉を閉めた瞬間、その音が静寂を切り裂いた。
そして、遠くで雷鳴が轟いた。
まるで地の果てからやってきたような、記憶の底に眠っていた何かが目を覚ましたような音。
雷鳴は、過去の咆哮だった。
忘れられた時の底から、名前のない想いに輪郭を与えるように。
それは単なる天候の音ではなく、私の中にある何か──ずっと語られなかった問い、置き去りにした憧れ、見つめられなかったまなざし──そうしたものが音に変わって姿を現したかのようだった。
ふと、冷たい床に素足で立ち、椅子に身を沈める。
雷鳴はもう遠くでしか響いていないのに、部屋の中に、そして私の内側に反響していた。
その残響に思考がふわりと浮かび、言葉にならない何かが耳の奥で震えている。
私の心もまた、ひとつの湿地だったのかもしれない。
穏やかな表面の下に、沈黙が潜み、語られなかった感情が堆積している場所。
その深みに響く雷鳴こそが、記憶という岩盤から漏れ出した小さな哲学だった。
だから私は、耳を澄ませる。
静寂の中に隠された声を拾うために。
あの雷鳴が教えてくれた。音のない言葉こそが、ときに最も深い意味を持つのだと。